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革を知り、レッドウィングを制す
比較的身近になってきたレッドウィングのブーツ。実際どのくらいの種類のレザーを扱っているのかという素朴な疑問に切り込んでいきたいと思います。これを機に、Z世代の方にも知ってもらえるととてもうれしいです。
まずは製革業を語るうえで欠かせない、タンナーについて紹介していきます。
レッドウィング社のタンナー
タンナーとは、動物の皮をなめして、なめし革にする製革業者のことを指します。 なめすという英単語であるtanに由来しています。 近年では製革業者というよりタンナーという言葉の方がよく使われるようになっています。そして、レッドウィングは自社でタンナーを持っています。自社タンナーを持っているブーツメーカーは世界的にもほとんど聞いたことがありません。レッドウィング社が、現在100%子会社となっているタンナーのエス・ビー・フット社を買い取ったのは1987年です。レッドウィング社と同じミネソタ州レッドウィング市にあり、経営不振に陥っていたエス・ビー・フット社を救済し、存続させるためという理由もありました。しかもエス・ビー・フット社はレッドウィング社の創業者チャールズ・ベックマンが創業以前、自分の靴屋を始める前に働いていたところでもあり、古くから深い縁あったという奇跡的な逸話も存在します。こうしてレッドウィング社の一部となったエス・ビー・フット社は主にレッドウィング社の靴のためのレザーをなめす業務をしています。
レッドウィングブーツに使用されているレザーは全24種
㊧エスカイヤ ※通常、レッドウィング社が使用するレザーはステアハイド(オスの肉牛の皮)からつくられますが、エスカイヤにはヘファーハイド(若い未経産の牝牛の皮)のみ使われます。へファーはステアに比べ、キメの細かい肌目を持っていますが、その数は限られており非常に貴重なものです。
㊥クローム ※オイル等への耐性が強く、レッドウィング社を代表するレザー。 硬そうに見える外見とは違い履いてみると足馴染みが良い定番のレザーです。
㊨クロンダイク ※ブラウンの芯地の上にブラックの塗装を施した、1990年代まで存在していた伝統的なブラックレザーのつくりを再現した茶芯レザーです。履いていくうちにキズや摩擦の多い部分から黒い塗膜下の茶色の芯地が見えるという独特の経年変化を楽しめるレザーです。
㊧シャパラル ※ガラスレザーに近いレザーで、仕上げの段階で皮革の表面に塗料を塗りこむことで独特な艶感と耐久性があります。 ガラスレザーにありがちなひび割れや細かなシワも軽減するという特徴があります。 メンテナンスすれば、重厚感、深い光沢を保てる経年変化を楽しめるレザーでもあります。
㊥ハーネス ※油分をしっかりと吸い込んだレザーで、革本来の肌目を感じられます。オイルがしっかりと染み込んでいるので頻繁なケアの必要がないというメリットがあります。
㊨フェザーストーン ※ベックマンでのみ使われるフェザーストーン系列のブラックモデル。このレザーも原皮の5%程度しか見つからない、傷の少ない上質な部分を使った贅沢なレザーです。
㊧プレーリー ※オイルを含ませた革の銀面(表面)をそのまま加工せずに、薄い塗装を施したフルグレインレザーです。通常のオイルドレザーと同じお手入れでメンテナンス可能です。
㊥ユーコン ※牛革のなかでも特に上質な部分を原料とし、なめしの段階で特別なプロセスを経て、防水性を持たせたレザーです。通気性も高く確保されており、透湿性能を妨げないように通気性も持たせてある防水レザーとなっています。通気性を持つことで靴内部の熱を逃がしやすくするメリットがあります。
㊨アビレーン ※ラフアウトレザーであるこのレザーは、オイルをほとんど含ませずにつくるドライタンレザーです。 オイルを与えずともしなやかさを維持すべくつくられており、オイルを与える必要がありません。
㊧ブルハイドラフアウト ※1990年前後のラフアウトレザーが持っていた、かすかに赤みを帯びたベージュの色あいと長い毛足が特徴のレザーです。
㊥ホーソーンアビレーン ※先述のアビレーンと同様のため割愛いたします。
㊨ミュールスキナー ※オイルを加えたラフアウトレザーです。1980年代から日本でのレッドウィング定番レザーとして広く知られているベージュのラフアウト、ホーソーンアビレーンよりも少し色が濃くなっているのは、オイルが入っているからです。
㊧オックスブラッドメサ ※深いワインレッドのプルアップレザーでオイルを豊富に含んでいるため、押すと中に含まれるオイルが移動して色が変わる特殊なレザーです。オイルドレザー特有のしっとりとした肌触りが特徴です。
㊥オロラセット ポーテージ ※元々はオレンジがかったブラウンの色をしていたレザーですが1990年代に入ると次第に赤みを増していきました。その後アメリカ市場で一旦元の色に戻そうという事になった時に、日本市場で人気の高かった赤みの強い色合いを再現し製作された定番レザーです。
㊨オロレガシー ※2014年にレザーを本来のオイルを豊富に含むオレンジがかったブラウンのレザーに戻すことになり、出来上がったレザーです。特にスムーズな銀面を持つ原皮を選び、なめした後に染め上げるのみで銀面に塗装を一切しないため、自然な肌目を持つレザーに仕上がっています。履き込むほどに表情を増し、味わいが深まっていきます。
㊧カッパー ラフアンドタフ ※銀面を擦って加工して独特の風合いを出してあるレザーです。擦った銀面は、加工されていない銀面と比べるとオイルの吸収が格段に良いため、オイル系のケア製品を塗るとレザーの色がより濃くなります。
㊥ブライアー オイルスリック ※その名の通り、オイルを豊富に含むレザーです。頻繁なオイル塗布は必要ありません。独特の色味とシボが他のレザーの風合いとは異なる魅力を持ち合わせています。エイジングが進みにくいという一面もあります。
㊨アンバー ハーネス ※先述のハーネスと同様のため割愛いたします。
㊧ゴールドラセット セコイア ※当時のアイリッシュセッターのレザーは色ムラが多く、時に赤みを帯びたブラウン、時にゴールドに近い明るいブラウンと常に変化していました。その色のバリエーションの中からゴールドのものを再現し新たに開発されたのがこのレザーです。
㊥モハヴェ ラフアウト ※モハヴェレザーは防水ラフアウトレザーです。通気性を確保しつつ、水の浸透を防ぐ加工がされています。オイルを与えずともしなやかさを維持すべくつくられており、通気性確保のためオイルを入れていません。通気性を維持するためにはオイル系のシューケア製品を使用しないに限ります。
㊨チョコレート クローム ※先述のクロームと同様のため割愛いたします。
㊧シガー㊥チェスナッツ㊨ブラックチェリー ※先述のフェザーストーンと同様のため割愛いたします。
ここまでざっくりときましたが、自社タンナーを持つレッドウィングだからこそ実験的な加工や独自の観点で多彩なレザーを追及していることが伺えます。これからも新たなレザーが生まれるかもしれないと思うととても楽しみですね。
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