NIKEのエアフォース1や、CONVERSEのオールスター、VANSのオールドスクールなど、それぞれのブランドには必ず象徴とされる定番モデルが存在します。もちろんadidasも例外ではなく、スーパースターやスタンスミス、キャンバスなどさまざまなモデルが人気を博しています。
そんな中、現在のヴィンテージブームや古着ブームの影響もあってか、NIKEのコルテッツのようなレトロでクラシカルな印象のスニーカーが再度脚光を浴びてきており、中でもサンバが破竹の勢いで今のスニーカーシーンを席巻しているといっても過言ではありません。
今回はそんなサンバの人気の理由を徹底解剖していきたいと思います。
SAMBAの開発
adidasは1949年にドイツのヘルツォーゲンアウラハという地域で創立されたブランドで、創設者のアドルフ・ダスラー(Adolf Dassler)の愛称であるアディとダスラーを繋げてアディダスというブランド名となりました。
そんな今をときめくサンバの発売された年はなんと1950年! adidasの中でも最古のスニーカーの1つと言われているくらい歴史の長いモデルなんです。
HAILLET(ハイレット/のちのスタンスミス)の発売された年は1965年、Superstar(スーパースター)は1969年と、adidasの中でもトップクラスの人気を誇るモデルたちよりも前に発売されていたんです!
余談ですが、スタンスミスは世界で最も売れたスニーカーとしてギネスブックにも認定されているんです。
1950年に開催されたブラジルワールドカップを記念して発売されたスニーカーで、開催地であるブラジルの代表的な音楽”サンバ”からそのまま名前を取ったと言われています。もともと冬季のフットボールシューズとして、他のスパイクでは使えないような過酷なコンディションにも対応できるように開発されたモデルでした。
ソールにはスパイクではなくゴムを採用されており、そのソールは従来のサッカースパイクとは全くと言っていいほど違っていました。本来であれば冬季の固く凍った上でプレーをする場合、ある程度滑りを軽減するためにはスパイクを地面に刺し滑るのを防いでいましたが、サンバは他と違いソールに穴が開いたデザインとなっていました。これにより、足に体重をかけた際に穴の中の空気が外に逃げ真空状態となり、吸盤の効果を発揮し滑らなくなるというものでした。
このソールの形状によりサッカー選手からはもちろんのこと、ストリートで着用できるサッカーシューズとして一般のユーザーにまで、幅広い人気を得たスニーカーとなりました。
この穴の開いたデザインは今のサンバのソールデザインにも使用されており、インドアのスポーツやフットサルでも使用出来る造りとなっています。
フットボールシューズからタウンユースへ
時代の流れとともにサンバも変化していき、サッカー界にとどまらずストリートカルチャーでも愛用されることとなっていきました。今馴染みのあるサンバのディティールは、1970年代には既に完成されていたといっても過言ではなく、フルグレインレザーのボディにトゥのTパネル、ガムソールやホワイトのスリーストライプなど、今のサンバと同じスタイルでデザインされていました。
そんな70年代には米国のヒップホップと同様に、英国の若者たちがスポーツウェアをストリートファッションとして使用し始めました。トラックジャケットやナイロンジャケット、スニーカーなどが中心としたスタイルとなっていき、タウンユースでも使用できるサンバは英国のストリートカルチャーには欠かせない存在となっていきました。そして日本でも90年代の裏原系ファッションやadidasのトラックジャケットの流行とともに、サンバがタウンユースで履かれていきました。
ファッショントレンドの変化
現在の若い世代では70年代に英国で流行していたような“ブロークコア(Blokecore)”がファッションのトレンドとして世界中で大流行しています。”ブロークコア”とは、二つの言葉から組み合わされた造語であり、主に英国圏で使用されている男性や奴といった意味のスラングである“Bloke”と、さまざまなトレンドの語尾によく用いられる核や熱狂と訳される“Core”から付けられたもの。
この言葉自体できたのが最近のことで、アメリカ人クリエイターであるのブランドン・ハントリーという方が、イギリスのサッカー系YouTuberたちがよく口にしていた”Bloke”にインスパイアされ、TikTokに使用したのが始まりと言われています。
それにより、今の10代、20代のトレンドにヴィンテージのアイテムやスポーツ系のアイテムが取り入れられ、それに合ったレトロで履きやすいスニーカーが注目され始めました。そんなピッタリなスニーカーがサンバだったと僕は思います。実際にサンバを履いてみて思ったのが、もう何年も履いていたっけ?と思うくらい自分の足に馴染んでいるんです。他の靴だと多少の靴擦れや足の疲れが出てきてしまうものですが、僕の体感だと全く感じさせない履き心地でした。(覚えてないだけかもしれませんが…)
そんな履きやすさを誇るサンバですが、サッカーアイテムを取り入れたファッションだけでなくびっくりするくらいどんなコーデにも取り入れられます。ブロークコアやストリート系はもちろんのこと、セットアップなどのカジュアルな服装でも良いアクセントとなりちょっとこなれ感のあるスタイリングが出来ちゃう優れものなんです。過去にNIKEのAIR FORCE 1が流行したときと同様に、その時の流行だけでなく数年経っても変わらずより多くのファッション好き・スニーカー好きの人たちに、長く愛用されるスニーカーになっていくと僕は感じています。